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世界に挑む、ということ。MUSEがSXSW Pitch Finalistとして感じたリアル




はじめに:なぜこのブログを書くのか


みなさん、こんにちは。MUSE代表の笠置です!


今回3月6日~9日で登壇したSXSW Pitchについてブログに掲載しようと思います。


SXSW Pitchは、これまで17回開催されてきた世界最大級のスタートアップ・ピッチイベントです。私たちMUSEは、日本企業として5社目、ロボティクスカテゴリーでは初となるFinalistに選出されました。


しかし、結果は「優勝ならず」


この結果があまりにも悔しくて、その思いを整理するためにも、そしてこれからSXSW Pitchに挑む日本のスタートアップの方々の参考になればと思い、このブログを書くことにしました。


SXSWに関心のある方、米国進出を視野に入れているスタートアップの方に向けて、できる限りリアルな経験を綴っていきます。



SXSW Pitchとは?


SXSW Pitchは、米テキサス州オースティンで開催されるSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)内の公式スタートアップピッチイベントです。


世界中からスタートアップが集まり、各カテゴリーごとに審査員の前で3分間のプレゼン+Q&Aを行います。詳細についてはこちらが分かりやすくまとまっています:



参加のきっかけと背景


実は、SXSWの存在を知ったのは、会社設立当初にデザイナーさんとの何気ない会話がきっかけでした。


「スタートアップっていうと、あのSXSWとか出るんですか?」


── そんな一言に、「出れたらかっこいいな」という想いが芽生えたのを覚えています。

その後、私たちはテキサス州を拠点に米国展開を進めていく中で、「SXSWでの露出が米国企業への認知に繋がるのでは」と考え、出場を決めました。

とはいえ、Finalistへの道は狭き門。ダメ元で応募した、というのが正直なところです。

書類審査ではビジネスモデル、競合優位性、トラクション、受賞歴に加え、プロダクト動画の提出も求められます。ここでインパクトのあるデモ動画を用意することが、通過のカギになります。



準備編:Finalistに選ばれてから本番まで


応募したのは7月。忘れかけていた12月中旬、一通の英文メールが届きました。


そこには、SXSW Pitch Finalistの文字。

嬉しさと同時に、一気に緊張と不安が押し寄せました。


SXSW Pitchは2名1組で出場します。PresenterとAssistantの役割があり、私はPresenter、現地で事業開発を行うJoelをAssistantに任命しました。


AssistantはStageには立たないものの、スライドを操作しPresenterのSpeechに合わせてSlide上のアニメーションや動画を再生します。この二人の息がぴったりと合うことも効果的なPitchをするうえで重要です。


Joelは現地子会社MUSE USのBoard of Directorなのですが、US Army出身で、25年以上Walmartで働き・過去に店舗でのロボット導入を経験したこともある店舗オペレーションからロボットまで知る希少な人物です。私たちの米国進出において中核となる人材です。


2か月間の間で準備したことは多岐にわたります:

  1. Pitchストーリーのブラッシュアップ

  2. スライドデザイン・体裁の改善

  3. SXSW Pitchの公式ピッチコーチング(全体2回、個別3回)

  4. 公式ピッチコーチング前後のVideo pitch feedback(前後計2回)

  5. JETROのGlobal Acceleration Hubを活用したピッチコーチング(計6回)

  6. Joelとのリモート&現地での徹底的なピッチ練習とQ&A対策

  7. 一人での練習(おそらく100回以上..)


この中でも効果的だと思ったのが、4のVideo pitch feedbackです。


公式ピッチコーチングの最初と最後のタイミングで実際のピッチの動画を送り、それに対して10名ほどのコーチがフィードバックを送ってくれます。


各審査項目での採点や、全体的な良い点・改善点、など詳細にフィードバックしてくれるので、とても参考になりました。


SXSW Pitchでの審査項目はこちらを参照ください。



現地での過ごし方と本番の様子


現地入り(3月6日)

リハーサルの前日に現地入りし、Joelと合流しました。Austinにはそれまで何度か訪問していましたが、この期間はSXSW一色です。

街角から流れる音楽や散発的に開催されるイベントなど、街を歩くだけで気分が高揚してきます。



リハーサル(3月7日)

Pitch本番までは比較的空き時間もあるので、現地でのSessionやEventなども楽しんでみよう、という気持ちでいましたが、実際にはそんな余裕はそれほどなく、開始早々のリハーサルで5組のFinalistと初めての顔合わせとなるのですが、ちゃんとプレゼンがうまく行ったのはその中でも2組ぐらいでした。


私たちも、慣れないGoogle Slideを編集モードで投影してしまい、動画が流せなかったりして失敗しました・・ その後リハーサルの場にいた複数のコーチから様々なフィードバックをもらうのですが、中には「このタイミングでその修正?!」みたいな大掛かりな修正を要求するコーチもいるので、そこは見極めが必要です。ちなみに我々はリスクが大きすぎるということで当初のスライドで継続することになりました。



中日(3月8日)

8日は中日でしたが、半日くらいJoelとホテルの会議室でPitch練習をしていました。この頃にはPitchのスクリプトも完全に空で言えるようになっていて、ほぼ時間通りに終えられるようになっています。あとはQ&Aだけだね、ということで、とにかく想定質問を二人で考え、ぶつけてもらうということをひたすらやっていました。





本番当日(3月9日)

いよいよPitch本番です。ここまでくると、あとは前日にいかに十分な睡眠がとれるかということが大事になってきます。ホテルはダウンタウンの中心部にとっていましたので、SXSW会期中はどこもお祭り騒ぎで、ちょうどホテルの前がパーティ会場のようになっていて、午前2時くらいまで騒音が響き渡っていました。

これはダメだということで、耳栓(これは必須)をすることでバッチリ眠ることができました。 当日も午前7時にJoelと集まり、1時間ほど最後の予行演習を行ったうえで、いざ会場へ。


Pitchの1時間前にCheck in roomに通されるのですが、Judgeも含め他のFinalistも比較的リラックスした感じで軽食を食べたり、コーヒーを飲んだりしていました。

別のカテゴリーのPitchも前日に見ていましたが、そこは半分ぐらいの聴衆でこんなものか、と思っていたら我々のカテゴリーは満員御礼でRobotics系の関心の高さを感じました。


けっこう日本人の方もいらっしゃったので、MUSEが出場するということで参加してただいた方もいたのではないかと思います。 そして、いざ本番がスタート。Joelのスライド送りも良く、Pitchは15秒ほど余りましたがほぼ想定通りの出来。 またQ&Aも何とかこなせて自分の中では相応の手ごたえはありました。


Q&Aでは何度か質問が聞き取れず聞き返すこともありましたが、プロダクトの発展性、マーケットの大きさ、などJudgeもポジティブな感じでやり取りがされていたと思います。 相方のJoelもGreat job!ということで手ごたえを感じていたようです。 一方、他のチームもこの二日間で完成度に磨きがかかっており、ちゃんと仕上げてきていました。






結果発表とその後


そして結果発表、他のチームもすごく良かったので自分たちが優勝するという確信はなかったです。 ただこのチームは有りうるな、というのは確かにありました。


しかし、結果はそこでもなくまた別のチームでした。


結果が発表された瞬間の落ち込みはけっこうあり、同じカテゴリーのピッチ参加者同士でこの後飲みに行こう、という話もありましたが そんな気にもなれず、ホテルに帰り、疲れもあったのかそのまま寝てしまいました。






Finalist Meetup(3月10日)

結果発表の翌日はFinalist Meetupです。すべてのカテゴリーのFinalistがブースを構え、関心を持った参加者と交流をする場です。


気持ちを切り替え、Joelとともに製品のデモや紹介をしました。


全体的にはそれほど来場者は多くない印象でしたが、私たちのブースではロボットを実際に動かしたり、日本の方も数多くお越しいただきました。


全体的には事業会社の方が多く、投資家の方がチラホラという感じです。




考察:SXSW Pitchで勝つために必要なこと


正直、本番当日はフィードバックももらえないですし、Judgeが各社をどう評価したのか、も分かりません。 ただ、優勝したチームの傾向から以下のことはいえるのではないかと思います。 とにかく分かりやすさ、インパクト、が評価の優劣を決めると考えます。


  • 解決する課題の明瞭さと共感性

  • ソリューションとの整合性

  • スライドの簡潔さ

  • そして何よりも、英語での即興力(Q&A)


3分のピッチではとてもじゃないですが、多くは語れません。そうすると、やはりいかにシンプルに、簡潔にエッセンスを伝えるかということにつきます。


どこも素晴らしいスタートアップだと思いましたし、登壇者も魅力的です。ただ唯一結果を分けるとしたらその辺りなのではないか、と感じました。


あとは、当たり前の話ですが、英語力はとても重要です。私は海外経験もないですし、英会話はほぼ日本国内での経験で培ったものなので、おそらく参加Finalistの中では一番できなかったと自負しています笑 Pitchはある程度発音を気を付ければScriptベースで何とかなりますが、Q&AになるとJudgeの曖昧な言葉をうまくとらえ即興で納得できる回答をする技術が求められるので、そこで大きく差がついてしまうことは否めません。


SXSW Pitch、その後の反響

また終わってから1カ月ほどしか経ってないので分かりませんが、少なくともテキサス州域の方々にとってSXSWは最大のお祭りなので、SXSW Pitchに出たことによって見る目が変わりました。


今後米国の顧客との商談や資金調達の際にも話のネタになると思うので、その点は活用できると思います。


また何より日本の方も今回400名以上の方が参加されていたようですが、日本人の登壇は非常に珍しいので注目されます。

実際に事業連携や資金調達の話に繋がっていることもあります。



おわりに:これから挑戦する人へ


SXSW Pitchは、ただのピッチイベントではありません。「世界に自分たちの存在を問う」場です。


挑戦の先に成功があるとは限らない。


でも、その過程で得た学びや仲間、悔しさは、何ものにも代えがたい財産です。


もし今、SXSW Pitchに応募しようか迷っている方がいたら──ぜひ挑戦してください。

そして、もっと多くの日本企業が世界の舞台で存在感を放つ日を、一緒に作っていきましょう。






​株式会社MUSE(ミューズ)|小売店舗向けロボット

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