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商業空間で“ちゃんと動く”ロボットを作るということ

-「例外」だらけの現場に挑む開発チームのリアル  -



日常の買い物の場に、ロボットが自然に混ざる未来を目指すMUSE。今回は、CTOを務める石川さんに、開発の裏側やチームに込めた想いを伺いました。



石川一洋


取締役CTO/MUSE Inc.


超伝導薄膜の研究で修士号。電気設計でキャリアをスタート。ZMPにて15年に渡り商品企画、システム設計、量産、サポートなどを担当。倉庫施設向けロボットの自律化方式の考案や自動運転車両のハードウェア実装など、ロボット技術の応用を幅広く実現。2022年にMUSEを共同創業。





- 商業空間向けのロボット開発、最初にどんな課題意識があったのでしょうか?


元々前職では工場倉庫で使用するAMRから自動運転車、歩行ロボットまで様々なロボット開発に関わってきました。どの開発でも「ロボット・自動化機能はこうあるべき」という前提から性能・利便性を如何に向上させるか、という開発が主だったと思います。


商業空間向けの、特に比較的重量物を搬送するロボットを考えた場合、まず前例が無いことが難しさでもあり、面白さでもありました。ではなぜそのようなロボットは店舗のような商業空間でまったく使われていないのでしょう。


理由は明確で、商業空間はロボットにとって本当に過酷な環境だからです。 通路は狭く、人やカートが常に行き交っている。バックヤードからスイングドア、店内フロアなどの環境変化。レイアウトも日々変わる。従来のAMR (Autonomous Mobile Robot)やAGV (Automated Guided Vehicle)をそのまま持ち込んでも機能しないと感じました。


いかに「商業空間で主役の人、そして人に合わせた環境」にロボットが混ざることが出来るかを考え尽くして設計しようと決めました。また使う現場の方がいかに簡単に扱えるか、導入できるかも重要な前提として考えました。





- Armoは“止まらないこと”を最優先に設計されたと聞きました。なぜそこにこだわったのですか?


少し語弊があるかもしれないですが、Armoは単に高性能を訴求したいロボットでは無いです。基本的に移動型ロボットは「より重い物を」「より正確に」「より早く」「より安全」に運ぶことを目的にしています。Armoは「店舗で必要なものを」「必要な精度で」「安全に運ぶ」ことを目的としています。


また、従来のロボットは目的<<安全のバランスから率先して止まることを重視しています。それ自体は悪いことでは無いですが、目的が過大過ぎると安全設計から殆どの場合、途中で止まってしまうシステムになってしまいます。どれだけ高精度に経路追従できるロボットでも現場で止まってしまえば、買い物客にとっても邪魔になってしまいますよね。


そこで設計思想として、経路追従に拘らない、「環境に合わせながら常に動き続ける」ことを目指しています。また、目的を過大にしないために店内のどこに着ければOKという許容値の定義も工夫しています。マップとルート設定、ローカリゼーション手法も店舗にマッチさせることは必須と考えて独自設計を行っています。


高価なロボットを導入しても使われなくなってしまっては意味がありません。Armoは商業施設に合わせた適切な性能を、簡単に導入でき、持続的に多店舗展開できることが最大の特徴です。





- 現場環境で苦労したこと、印象的だったエピソードはありますか?


「いかにしてスイングドアを通過するか」が大問題でした。


ひょっとしたらArmoはスイングドアを押し開けて通過した最初のロボットかもしれません。Armoを店舗に持ち込んだ時、当たり前にドア通過はどうしますか?という話になります。Armo通過の時はドアは開けっぱなしにしておくか、自動ドアの機構を付けるか、その場合はロボットの為に施設の設備又は現在の運用を大幅に変えなければいけません。


ドアを押し開ければ良いですかね、取りあえず試してみますか、という流れから、スイングドアの押し開けをはじめました。進めていくと問題は沢山出てきます。人と鉢合わせた時はどうするか、片側しか開かないドアはどうするか、ドアにゴムクッションがあった場合はどうするか、ドアが重い場合どうするか、そもそもドアはArmoのセンサーから見れば壁でしかないので、ドアに正確にアプローチする精度が必要になります。


まだまだ改善途中ではありますが、結果としては設備側の変更、運用変更は有りませんので、最短で店舗実装が進んだと思います。店舗のスタッフさんもArmoに道を譲ってくれたり、Armoとの共存を受け入れてくれたと感じています。


Armoが自らスイングドアを押し開ける様子
Armoが自らスイングドアを押し開ける様子



- 開発チームにはどんな特徴がありますか?雰囲気やスタイルについて教えてください。


MUSEでは、ロボットのメカ・エレキから、組み込み・自律走行ソフト、クラウド側でのロボットコミュニケーション・DB開発、アプリ上のUI/UX、棚画像取得に関連したML・AI開発まで全てを内製しています。


ハードウェアを扱っているので驚かれることも多いですが、日本で毎日出社しているエンジニアは2割程度で、ほとんどのエンジニアはそれぞれの拠点(国内リモート、シンガポール、ベトナム、インド、エジプト、カナダなど)で開発を進めています。実際に会ったこと無い人もいますがそれぞれが信頼しあっていると感じます(笑)。


開発のカバー範囲が広い中で製品として結果を出すには、予定より遅れているチームがあった時に自分のチームで何かサポートが出来るか、この先の実装を進めるよりテストを補助した方が良いか、研究的なテーマを進めておくかなど、全体の中で常に優先順位を見極めながら進めることが重要となります。


場所も時間帯も異なるメンバーが実績を上げ続けられているのは凄いことだと感じます。ビジネスチームやテストチームからの要望や結果を真摯に受け止め改善を諦めない、難しい課題でも現実的なアイデアを出して実装、運用まで進めることができるチームだと思います。個人的に重要な指標としている、新しいアイデアを現場投入まで持って行ける比率はかなり高いと感じています。





- 今後、どんな未来を描いていますか?


「ロボットがいるのが当たり前」の風景をつくりたい。 Armoが目指しているのは、単に「技術的にすごいロボット」ではありません。「ああ、あの店にもロボットいるね」って思える自然な存在でありたい。 それが実現できたとき、人の働き方も、商業空間の設計も、きっと少し変わっているはずです。 まだ道のりは長いですが、着実に現場と向き合っていくことで、“当たり前の風景”をつくっていけると信じています。


ある日の石川CTOのデスクの周りの様子
ある日の石川CTOのデスクの周りの様子




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●      SLAMや経路計画の知識を「現場向けの実装」に落とし込める人

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●      「ちゃんと動く」ロボットにこだわりたい人


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​株式会社MUSE(ミューズ)|小売店舗向けロボット

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